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  • 一 企業主が生命または身体を侵害されたことにより生ずる財産上の損害額の算定基準
  • 二 附帯上告が上告理由と同一の理由に基づく場合とその提起期間

S43.08.02 最高(二小)判 事件番号 昭37(オ)611

  • 判決
    • 企業主が生命もしくは身体を侵害されたため,その企業に従事することができなくなつたことによつて生ずる財産上の損害額は,

      原則として,企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によつて算定すべきであり,企業主の死亡により廃業のやむなきに至つた場合等特段の事情の存しないかぎり,企業主生存中の従前の収益の全部が企業主の右労務等によつてのみ取得されていたと見ることはできない。

      したがつて,企業主の死亡にかかわらず企業そのものが存続し,収益をあげているときは,従前の収益の全部が企業主の右労務等によつてのみ取得されたものではないと推定するのが相当である。

      ところで,原審の確定した事実によれば,Eの営業収益額は昭和二七年から同三一年までの五年間の平均で年間九七八,〇四四円であり,同人死亡後その営業を承継した被上告人らがあげた同三三年度の営業収益は二〇八,三一八円であるというのである。

      したがつて,被上告人らのあげた同三四年度以降の営業収益が右同三三年度の営業収益と同額であるとすれば,特段の事情のないかぎり,

      右説示に照らして,Eが生命を侵害されて企業に従事することができなくなつたことによつて生ずる昭和三三年度以降の一年あたりの財産上の損害額は右九七八,〇四四円から二〇八,三一八円を差し引いた額であると推定するのが相当である。

      しかるに,原判決は右損害額の算定の基準として,なんら特段の事情を示すことなく,Eが従前取得していた収益全額をもつてすべきものとしているのである。

      しからば,原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背および被上告人らの同三四年度以降の営業収益について審理を尽さない違法があるものというべく,論旨はこの点において理由があるに帰する

  • 母の受傷を理由とする子の慰藉料請求について調停が成立した後母が死亡した場合とその死亡を理由とする子の慰藉料請求権

S43.04.11 最高(一小)判 事件番号 昭39(オ)538

  • 判決
    • しかし,精神上の損害賠償請求の点については,Eおよび上告人らは先ず調停においてEの受傷による慰藉料請求をし,その後Eが死亡したため,本訴において,同人の死亡を原因として慰藉料を

      請求するものであることは前記のとおりであり,かつ,右調停当時Eの死亡することは全く予想されなかつたものとすれば,身体侵害を理由とする慰藉料請求権と生命侵害を理由とする慰藉料請求権とは,

      被侵害権利を異にするから,右のような関係にある場合においては,同一の原因事実に基づく場合であつても,受傷に基づく慰藉料請求と生命侵害を理由とする慰藉料請求とは同一性を有しないと解するを相当とする

  • 示談当時予想しなかつた後遺症等が発生した場合と示談の効力

S43.03.15 最高(二小)判 事件番号 昭40(オ)347

  • 判決
    • 手術を余儀なくされ、手術後も左前腕関節の用を廃する程度の機能障害が残り、よつて七七万余円の損害を受けたというのである。

      このように、全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合において、

      示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、

      その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない
       

  • 加害自動車と同一方向に進行していた被害自転車の衝突において自転車に過失があるかどうかを判断するにつき審理不尽・理由不備・理由そごの違法があるとされた事例

S43.03.14 最高(一小)判 事件番号 昭41(オ)54

  • 判決
    • 道路西端を上告人Aと同一方向に向つて進行中の被上告人が方向を転じたとすれば、その方向転換はUターンか道路横断かのいずれかしかないわけである。

      そうとすれば、
      「1」の事実認定は経験則に反し、審理不尽、理由不備の違法があり、「2」の事実認定も審理不尽、理由不備、理由そごの違法があるものというべきである。

      そして、前記甲第三号証の五には、本件現場付近は自動車の通行のはげしい場所である旨、右甲第三号証の五、成立に争ない甲第三号山証の七には、本件衝突地点はセンターライン付近である旨の各記載があり、

      そして、この記載は、成立に争ない甲第三号証の一〇および一三の被上告人は自転車で進行中上告人Aの運転する自動車の前方約三〇メートル手前で突如Uターンを開始した旨の記載に符合する。

      したがつて、もし、右のとおり被上告人が方向転換をしたとすれば、かかる事情は被上告人の過失をうかがわしめるものであり、事実審が過失相殺を認めるべきかどうかを判断するについて、重要な要件の存否に関するものといわなければならない。

  • 労働能力が減少しても具体的に損害が発生していないとされた事例

S42.11.10 最高(二小)判 事件番号 昭41(オ)600

  • 判決
    • 交通事故による傷害のため,労働力の喪失・減退を来たしたことた理由として,将来得べかりし利益喪失による損害を算定するにあたつて,上告人の援用する労働能力喪失率が有力な資料となることは否定できない。

      しかし,損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから,労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかつた場合には,それを理由とする賠償請求ができないことはいうまでもない。

      原判決の確定した事実によれば,Dは本件交通事故により左太腿複雑骨折の傷害をうけたが,その後従来どおり会社に勤務し,従来の作業に従事し,本件事故による労働能力の減少によつて格別の収入減を生じていないというのであるから,労働能力減少による損害賠償を認めなかつた原判決の判断は正当であつて,所論の判例に反するところもない

  • 不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるか

S42.11.01 最高(大法廷)判 事件番号 昭38(オ)1408

  • 判決
    • ある者が他人の故意過失によつて財産以外の損害を被つた場合には,その者は,財産上の損害を被つた場合と同様,損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し,右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり,これを行使することができ,その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。

      そして,当該被害者が死亡したときは,その相続人は当然に慰藉料請求権を相続するものと解するのが相当である。

  • 自動車損害賠償保障法第三条にいう「他人」の意義

S42.09.29 最高(三小)判 事件番号 昭42(オ)88

  • 判決
    • 自動車損害賠償保障法第三条本文にいう「他人」とは、自己のために自動車を運行の用に供する者および当該自動車の運転者を除くそれ以外の者をいうものと解するのが相当であるところ、原審の確定したところによれば、上告人は酩酊して同人の車の助手席に乗り込んだDに対し、結局はその同乗を拒むことなく、そのまま右車を操縦したというのであるから、右Dを同条の「他人」にあたるとした原審の判断は相当である。

      したがつて、原判決に所論の違法はなく、所論は、原判決の認定にそわない事実に基づく見解であつて、採用できない。

  • 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効が進行しないとされた事例

S42.07.18 最高(三小)判 事件番号 昭40(オ)1232

  • 判決
    • 被害者が不法行為に基づく損害の発生を知つた以上,その損害と牽連一体をなす損害であつて当時においてその発生を予見することが可能であつたものについては,

      すべて被害者においてその認識があつたものとして,民法七二四条所定の時効は前記損害の発生を知つた時から進行を始めるものと解すべきではあるが,

      本件の場合のように,受傷時から相当期間経過後に原判示の経緯で前記の後遺症が現われ,そのため受傷時においては医学的にも通常予想しえなかつたような治療方法が必要とされ,

      右治療のため費用を支出することを余儀なくされるにいたつた等,原審認定の事実関係のもとにおいては,後日その治療を受けるようになるまでは,右治療に要した費用すなわち損害については,同条所定の時効は進行しないものと解するのが相当である

  • 一 被害者本人が幼児である場合と民法第七二二条第二項にいう被害者の範囲
  • 二 同条項にいう被害者の過失にあたらないとされた事例

S42.06.27 最高(三小)判 事件番号 昭40(オ)1056

  • 判決
    • 「民法七二二条二項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく,ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが,

      本件のように被害者本人が幼児である場合において,右にいう被害者側の過失とは,例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように,

      被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するを相当とし,

      所論のように両親より幼児の監護を委託された者の
      被用者のような被害者と一体をなすとみられない者の過失はこれに含まれないものと解すべきである。

      けだし,同条項が損害賠償の額を定めるにあたつて被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは,発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものである以上,

      被害者と一体をなすとみられない者の過失を斟酌することは,第三者の過失によつて生じた損害を被害者の負担に帰せしめ,加害者の負担を免ずることとなり,却つて公平の理念に反する結果となるからである。

      「原審の確定した事実によれば,D保育園保母Eの被害者Fを監護するについての過失が本件事故発生の一因となつているのであるが,

      Fの通園する右保育園と被上告人らを含む園児の保護者との間には,園児の登園帰宅の際には一定の区間は保育園側において監護の責任を受けもつ旨の取極めがされていたとはいえ,

      右Eは,Fの両親である被上告人らより直接に委託を受け被上告人らの被用者としてFの監護をしていたのではなく,D保育園の被用者として本件事故当日Fその他の園児を引率監護していたに過ぎないというのであるから,

      右の事実関係に基づけば,Eは,被害者Fと一体をなすとみられるような関係を有する者と解することはできず,右Eの過失をもつて民法七二二条二項に定める被害者の過失にあたるとすることはできない。

      従つて,これと同旨の原審の判断は正当であり,論旨は理由がない。

  • 一 児童が道路上で遊ぶことについて親権者に監督上の過失がないとされた事例
  • 二 子が重傷を受けた場合の父母の精神的苦痛について慰藉料請求が認められた事例

S42.01.31 最高(三小)判 事件番号 昭40(オ)1004

  • 判決
    • 原判決(引用第一審判決を含む。)の判示するところによると,被上告人B1は,本件事故の昭和三四年四月三日当時満七年二ヶ月余であつて,小学校二年生に進級したばかりであつたこと,

      本件事故は,道路上で遊戯中の右B1に加害自動車が衝突し,B1を路上に転倒させて右後輪で同人の両足を轢いたものであること,

      B1は,本件事故による負傷の治療のため,前後二回,通算約一一ケ月間にわたる入院加療,約一ケ月の通院加療を受け,その間手術回数も約一〇回に及び,本件事故後一年を経過した昭和三五年四月末頃,ようやく治癒の状態となつたが,

      本件負傷は各病院の医者から両足切断の外ないと診断されるほどの重傷であつたこと,現在なお右下腿の上三分の二の部分,後面の膝部下方手掌大の部分にそれぞれ醜状瘢痕があつて,右瘢痕部に知覚減弱と一部知覚過敏とがあり,

      また,右下肢が左下肢に比し二糎短縮し,長時間の正坐,歩行及び激しい運動等には到底たえがたいこと,そのため同人の将来の学業,就職等にも著しく制約を受け,その影響を受けることが多いものと考えられること,

      また,両下肢に残存する前記瘢痕部は醜,B1はこれを衆目にさらすことを恥じ,夏でも長ズボンをはき,銭湯にも行きたがらないほどであること,そして現在においても,衣類等が触れることにより右下肢の瘢痕部から出血をみることもしばしばで,そのたびに通院加療を受けていること,

      被上告人B2,B3は,その長男たるB1の前記のような重傷に対し,長期間の献身的な看護をし,B1は幸い奇蹟的に両足の切断を免れて,現在の状態にまで回復するに至つたけれども,前述のとおり通常人の身体に比すれば,多くの障害があり,父母として将来のB1の身のふり方等につき今後ともその精神的苦労が絶えないであろうことが認められるというのである。

      右認定の事実関係からすれば,被上告人B2,同B3の父母としての精神的苦痛は本件事故によつてB1の生命が侵害された場合のそれに比し著しく劣るものではないということができるから,右被上告人両名に自己の権利として慰藉料請求権を認めた原審の判断は是認できる。

  • 一 労働基準法に基づく災害補償と慰藉料との関係
  • 二 労働基準法第七五条の療養補償債務の履行遅滞となる時期
  • 三 労働基準法第七六条の休業補償債務の履行遅滞となる時期

S41.12.01 最高(一小)判 事件番号 昭38(オ)1035

  • 判決
    • 「労働者に対する災害補償は,労働者のこうむつた財産上の損害の填補のためにのみなされるのであつて,

      精神的損害の填補の目的をも含むものではないから,加害者たる第三者が支払つた慰藉料が使用者の支払うべき災害補償の額に影響を及ぼさないからである

      「被上告人は,本訴を不法行為に基づく損害賠償請求から労働者災害補償請求に交換的に変更した(当初は追加的変更であつたが,その後交換的変更に改めたことが記録上認められ。)ことが認められるが,

      この両請求は,いずれも,同一の交通事故によつて被上告人がこうむつた損害の填補を目的とするものであるから,

      その請求の基礎に変更がなく,かつ,記録上右変更当時の訴訟の経過・程度からすれば,右訴の変更により訴訟手続を著しく遅滞させる場合にも当らないものと認められるから,右変更を許容した原審の措置は相当である

      「労働基準法七五条に基づく療養補償を使用者が行なうべき時期については,同法に別段の規定はないが,

      同条の趣旨からいつて,療養補償の事由が発生すれば遅滞なく補償を行なうべきものと解され,そして,労働基準法施行規則三九条によれば,療養補償は毎月一回以上行なうべき旨規定されているから,

      使用者の右補償債務は,少なくとも,当該補償の事由の生じた月の末日にその履行期が到来し,同日の経過とともに履行遅滞に陥るものと解するのが相当である。

      「労働基準法七六条に基づく休業補償の履行期についても,同法に別段の規定はないが,この種の補償の性質上,通常の賃金支払日に補償金の支払を行なうべきものと解され,

      そして,労働基準法施行規則三九条によれば,休業補償もまた毎月一回以上行なうべき旨規定されているから,使用者の右補償債務は,少なくとも,当該休業期間の属する月の末日の経過とともに遅滞に陥るものと解するのが相当である。

      「被上告人は,原審において,上告人の清算結了の登記がなされた後,上告人に対する不法行為に基づく損害賠償請求を労働基準法に基づく労災補償請求に交換的に変更しているけれども,

      右変更前の訴訟が係属していた以上,これを無視して清算結了登記をしても,それによつて清算は結了するものではなく,その間にさらに適法な訴の変更がなされたのであるから,変更後の訴訟係属中はなお清算が終らないものと解すべきである

  • 一 被用者と第三者との共同過失によつて惹起された交通事故による損害を賠償した使用者の第三者に対する求償権の成否
  • 二 右の場合における第三者の負担部分

S41.11.18 最高(二小)判 事件番号 昭41(オ)58

  • 判決
    • 右事実関係のもとにおいては,被上告会社と上告人及び被上告人Bらは,Dに対して,各自,Dが蒙つた全損害を賠賞する義務を負うものというべきであり,

      また,右債務の弁済をした被上告会社は,上告人に対し,上告人と被上告人Bとの過失の割合にしたがつて定められるべき上告人の負担部分について求償権を行使することができるものと解するのが相当である

  • 一 第三者が市長振出の約束手形を取得するさいの調査について過失があるとして過失相殺を認めた事例。
  • 二 不法行為を理由とする損害賠償請求における過失相殺と当事者による主張の要否。

S41.06.21 最高(三小)判 事件番号 昭39(オ)437

  • 判決
    • 不法行為による損害賠償の額を定めるにあたり,被害者に過失のあるときは,裁判所がこれをしんしやくすることができることは民法七二二条の規定するところである。

      この規定によると,被害者の過失は賠償額の範囲に影響を及ぼすべき事実であるから,裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には,賠償額を判定するについて職権をもつてこれをしんしゃくすることができると解すべきであつて,賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しないものである(大審院判昭和二年(オ)八〇二号・同三年八月一日民集七巻六四八頁参照)。

  • 一 七四歳までの労働可能年令期を認めた事例
  • 二 慰謝料額における過失相殺の割合と物質的損害額のそれとは同一であることを要するか

S41.05.06 最高(二小)判 事件番号 昭40(オ)221

  • 判決
    • 「死者の労働可能年令期は,死者の年令・職業・健康状態その他諸般の事情を考慮して認定すべきところ,

      原判決挙示の証拠および認定した事情からすれば,本件事故により死亡した訴外武藤新作の労働可能年令期を七四歳と認定・判断したことは首肯できないことではないから,原判決には,所論のような違法はない。

      「同第三点について。
      不法行為による損害賠償請求について,被害者の過失をしんしやくするかどうかは,裁判所の自由裁量に属すると解することはすでに当裁判所の判例(第一小法廷判決昭和三二年(オ)八七七号,同三四年一一月二六日民集一三巻一二号一五六二頁)とするところであり,

      したがつて被害者の過失をどの程度しんしやくして損害額を算出するかということも裁判所の自由裁量に属するし,かつ慰謝料額の算出のときにしんしやくすべき被害者の過失の割合も物質的損害の賠償額のそれと同一の割合であることを要するものではない。

      「原判決には所論のような違法はなく,所論は,これを異なる見解に立つて,原判決を非難するものであつて,採用しがたい。

  • 不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給の受給利益喪失の損害賠償債権を相続した者が当該被害者の死亡により扶助料の受給権を取得した場合と扶助料額の限度における損害賠償額の減縮の適否。

S41.04.07 最高(一小)判 事件番号 昭38(オ)987

  • 判決
    • 国の公務員であつた者が一定期間勤務した後退職したことを要件として支給を受ける普通恩給は,当該恩給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに,その者の収入に生計を依存している家族に対する関
      係においても,同一の機能を営むものと認められる。

      そして,恩給を受けていた者が死亡したときには,これにより生計を維持し,または,これと生計を共にしていた一定の遺族に扶助料が支給されるが,

      右扶助料は右遺族に対する損失補償ないし生活保障の目的をもつて給付されるものであることは明らかである。

      このように,恩給権者固有の恩給と遺族の扶助料の両者が,当該遺族について,その目的あるいは機能を同じくすることを考えると,

      恩給を受けている者が,他人の不法行為によつて死亡し,これによつて被つた財産的損害の中に,その者がなお生存すべかりし期間内に取得すべき恩給受給利益を喪失した損害が計上されており,

      右財産的損害賠償債権の全部もしくは一部が,相続により,一相続人に承継された場合において,右相続人が,他方において,前記恩給受給者の死亡により,扶助料の支給を受ける権利を取得したときは,

      右相続人の請求できる財産的損害賠償額の算定にあたり,右損害賠償債権の中の恩給受給の利益に関する部分は,右扶助料額の限度において,当然,減縮しなければならないと解するのが相当である

  • 死者の労働可能年令期の認定

S40.06.08 最高(三小)判 事件番号 昭38(オ)605

  • 判決
    • 死者の労働可能年令期は,死者の年令,健康状態,職業その他諸般の事情を考慮してこれを認定すべきところ,原判示諸般の事情からすれば,本件事故により死亡した訴外Dの労働可能年令期を六八歳(平均寿命)と認定判断することも首肯できないことではないから,原判決に所論の違法はない。

  • 自動車運転者の過失が不可抗力によるものでないとされた事例。

S40.03.11 最高(一小)判 事件番号 昭38(オ)1348

  • 判決
    •  所論は、本件事故は自動車運転者として業務上注意すべき限界を超えた事由によつて発生したもので不可抗力によるものであると主張するが、

      原判決の確定した事実関係の下においては、本件事故は上告人Aの過失によるものであるとした原判決の判断は正当である





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