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  • 共同訴訟人の一人が相手方と他の共同訴訟人との訴訟につき相手方に補助参加をすることができる場合

S51.03.30 最高(三小)判 事件番号 昭46(オ)1057

  • 判決
    • 記録によれば,被上告人は,本訴により,補助参加人の保有し運転する自動車と上告人A1の保有し同A2の運転する自動車が交差点で衝突した反動により傷害を負つたことに基づき,補助参加人及び上告人らを共同被告として損害賠償を請求したが,

      第一審においては補助参加人に対する請求はほぼ全部認容され,上告人らに対する請求は棄却されたところ,補助参加人が,自己に対する第一審判決については控訴しなかつたが,

      上告人らもまた右事故につき損害賠償責任を免れないとして,被上告人のため補助参加を申し立てると同時に,原審に対し被上告人を控訴人とする控訴を提起したことが認められる。

      右の場合においては,被上告人と上告人らの間の本件訴訟の結果いかんによつて補助参加人の被上告人に対する損害賠償責任に消長をきたすものではないが,

      本件訴訟において上告人らの被上告人に対する損害賠償責任が認められれば,補助参加人は被上告人に対し上告人らと各自損害を賠償すれば足りることとなり,

      みずから損害を賠償したときは上告人らに対し求償し得ることになるのであるから,補助参加人は,本件訴訟において,被上告人の敗訴を防ぎ,上告人らの被上告人に対する損害賠償責任が認められる結果を得ることに利益を有するということができ,

      そのために自己に対する第一審判決について控訴しないときは第一審において相手方であつた被上告人に補助参加することも許されると解するのが,相当である。 

  • 夫の運転する自動車に同乗する妻が右自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被つた場合において夫にも過失があるときと民法七二二条二項

S51.03.25 最高(一小)判 事件番号 昭47(オ)457

  • 判決
    • 民法七二二条二項が不法行為による損害賠償の額を定めるにつき被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは,不法行為によつて発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものであると考えられるから,

      右被害者の過失には,被害者本人と身分上,生活関係上,一体をなすとみられるような関係にある者の過失,すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。

      したがつて,夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが,右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため,傷害を被つた妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについては,

      右夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り,夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とする。

  • 不起訴の合意にあたらない場合

S51.03.18 最高(一小)判 事件番号 昭50(オ)727

  • 判決
    • 本件和解契約中の前記部分の本旨は,上告人と被上告人らとの間で,上告人が本件事故後六か月内に治癒する見込のもとに,被上告人らが示談による約定を履行したときは,

      上告人において今後本件に関し異議の申立,訴の提起等は一切しない旨の合意が成立したことを意味するにすぎず,被上告人らが右約定を履行すると否とにかかわらず,右示談内容につき当事者間で不起訴の合意が成立したことを意味するものではないと解するのが相当である 

  • 一、 破棄差戻後の第一審と刑訴法四〇二条
    二、 刑訴法四〇二条に違反するとされた事例

S50.12.19 東京高 判 事件番号 昭50(う)1917)

  • 判決
    • 一、本件事故直前における被告人車両の速度について

      原判決挙示の証拠、特に司法巡査D作成の昭和四八年七月二一日付実況見分調書、新潟県警察技術吏員E作成の鑑定書(以下、単に実況見分調書、鑑定書という。いずれも原審弁護人において証拠とすることに同意している。)によれば、

      本件事故現場路上には、被告人車両の左右前輪によるスリツプ痕(スキツドマーク)二条(各約三・四メートル)、と左右の内外後輪によるスリツプ痕四条(各約二・四メートルないし約二・九メートル)が残つていたこと、

      前輪のスリツプ痕の長さと、乾燥したアスフアルト路面におけるタイヤと路面との摩擦係数(〇・六ないし〇・八)とから車速を換算すると、三二ないし二七キロメートル毎時となり、

      前後輪のスリツプ痕全六条の開始点、終了点の決定上の誤差等を考慮し、測定値の許容誤差をプラス、マイナス〇・三メートルとし、

      全スリツプ痕の長さの総和を走行タイヤ数で割つた値に基いて、前同様の方法で車速を換算すると、一八・三ないし二五・一キロメートル毎時となることが認められる。

      なお弁護人は当審弁論において、本件当時は盛夏で路面のアスフアルトは常温下より平滑になり、スリツプ痕が長く印象される状況にあつたというのであるが、

      当審における事実取調の結果によれば、摩擦係数が季節による路面温度により変化することは認められるが、右鑑定の基礎となつた摩擦係数を特に修正しなければならない特段の事情は見当らない。

      所論は、右鑑定書について、

      (1)鑑定の対象となつた問題のスリツプ痕が、被告人車両によるスリツプ痕であるとの証拠はなく、

      (2)鑑定の方法はスリツプ痕の長さを、現場写真から推定しているが、これでは、センチメートル単位の測定は不可能である、

      (3)鑑定書は、事故車両を「F型(F)と認定しているが、

      G株式会社において、右の様な型式の貨物自動車を製造、販売した事実はないから、右鑑定書の証明力は極めて弱く、事実認定の基礎とすることはできないというのであるが、

      前記各証拠によれば、

      (1) 問題のスリツプ痕のうち前輪の分二条は、本件事故直後行われた司法巡査Dの実況見分に被告人も立会つて、右二条のスリツプ痕が被告人車両のものであることを確認しており、

      右スリツプ痕はその場で測定され、前記実況見分調書にその旨記載されていること、後輪の分四条については右実況見分調書にその記載はない(もつとも右実況見分の際には、その存在につき確認はされていた)が、

      その際撮影したステレオカメラによる現場写真を拡大すると、右スリツプ痕四条が明認できるところ、被告人は本件の審理を通じ一貫して、本件事故現場には、前輪のスリツプ痕と共に、後輪のスリツプ痕も残つていたことを認めており、

      特に差戻前の原審第四回公判廷において、右現場拡大写真を示され、そこに明認できるスリツプ痕四条は被告人車両の後輪によるものに間違いない旨供述していることが認められるから、鑑定の対象となつたスリツプ痕はすべて被告人車両によるものであることは明らかである。

      (2)次に問題のスリツプ痕のうち後輪の分四条の長さの鑑定が右現場拡大写真からの推定によるものであることは所論のとおりであるが、

      右鑑定書によれば、前記現場拡大写真を検討すると、直線道路両側及びスリツプ痕に接着してゼブラ状の横断歩道も同時にうつつているので、

      これらを利用し、各スリツプ痕の開始点、終了点を横断歩道の線上に移動し道路巾を基にして線長比を算出し、各スリツプ痕の長さを決定したというのであつて、

      右鑑定の方法につき、特に疑念をさしはさむ余地はなく、又前記のごとき測定値の許容誤差(プラス・マイナス〇・三メートル)を考慮していることをも併せ考えると、所論のごとく、センチメートル単位の測定は右鑑定の方法では不可能であるとか、或は鑑定の数値が著しく不正確であるとか論難することは当を得ないものといわねばならない。

      (3)右鑑定書及び当審における事実取調の結果によれば、車両の型式につき所論指摘のような事実が認められ、したがつて、右鑑定書中本件事故車両の型式の判定については、誤記ないし誤解があつたのではないかと思われるが、

      右鑑定書を仔細に検討すると、右車両の型式は、問題のスリツプ痕が被告人車両のものであるかどうかの判定の一資料として考慮されたにすぎず、

      右スリツプ痕が被告人車両のものであることが他の証拠により明認できる本件では、右の事実があるからといつて右鑑定書の証明力が左右されるものとは到底考えられない。

      所論はまた、前記実況見分調書には後輪のスリツプ痕、横断歩道の巾、被害者の転倒位置等の記載がなく、又車両の型式に誤記又は誤認があること等を理由としてその証明力を争うのであるが、かかる事実をもつて直ちに、前記実況見分調書のその余の記載部分までがその証明力を失うものとは認められない。

      なお、所論は、被告人車両に同乗していたCの検察官に対する供述調書中、被告人車両の右折進行中の速度に関する供述部分は証明力に乏しい旨主張するが、

      原判決挙示のその余の証拠と対比し右供述調書の証明力に欠けるところがあるとは考えられず、これと右鑑定書および実況見分調書、被告人の司法巡査に対する昭和四八年七月一七日付供述調書中の、事故当時の自車の速度は時速約一五キロメートル位であつた旨の供述等を総合すれば、

      本件事故直前の被告人車両の速度は時速約一八・三キロメートルないし二〇キロメートルであると認めるのが相当であり、原審証人Aの、被告人車両はそれほど速度を出していなかつたと思う旨の供述も右の認定を妨げるものとは認められない。

      二、被告人車両前部が被害者Aに接触したかどうかについて

      原判決挙示の証拠、特にA(旧姓B)に対する証人尋問調書、医師H作成の診断書、原審第五回公判廷における証人Hの供述によれば、

      被告人が原判示交差点を時速約一八キロ余で右折進行中、原判示のとおり前方の横断歩道を左から右に横断歩行中の被害者Aを至近距離に接近してはじめて発見し、

      急制動措置を講じたが間に合わず、右横断歩道の左端から約二・四メートルの歩道上で自車前部を同人の右肘又は右腰部附近に接触させて、同人を路上に転倒させたことを優に認めることができ、

      このことは、被告人車両の前輪スリツプ痕が右接触地点の直前までつづいていること、被害者A(当二二年)は原判示のごとく脳振盪、後頭部皮下血腫のほか腰臀部、右肘関節部打撲傷の傷害をうけ、路上に転倒直後一時的に意識を喪失しており、シヨツクが非常に大きかつたと思われることなどからみても、明認できるのである。

      所論は要するに、被害者Aの原審における証言は車と接触した部位について極めて不明瞭で信用できないし、又人と自動車とが接触又は衝突する場合、

      特段の事情がない限りバンパーが接触する筈であるが、被告人車両の前面のバンパーの高さからみて、成人の女子の肘又は腰に接触するとは考えられないというのであるが、

      Aの前記証言を検討すると、所論のとおり質問者の質問に応じて接触部位に関する供述がしばしば変転しており、腰、右肘、頭のいずれであるか極めてあいまいであることが認められるが、

      前示のように同人が本件事故による受傷直後、一時意識を喪失していることを考慮すると、この点に関する記憶が鮮明ではないとも考えられ、

      また同人は本件事故直前、横断歩道上を横断歩行中であつたものであるから、被告人車両との接触時の姿勢如何によつて、必ずしも同車両前面のバンパーに接触する筈であるとはいえないから、

      同人の接触部位に関する供述があいまいな点、ならびに被告人車両のバンパーおよび被害者の身長等のみによつて、接触の事実自体を否定する理由とはなし難いといわねばならない。
       

  • 自動車の所有者でない所有者登録名義人が自動車損害賠償保障法三条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者にあたるとされた事例

S50.11.28  最高(三小)判 事件番号 昭50(オ)294

  • 判決
    • 「自動車の所有者から依頼されて自動車の所有者登録名義人となつた者が、登録名義人となつた経緯、所有者との身分関係、自動車の保管場所その他諸般の事情に照らし、

      自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある場合には、右登録名義人は、自動車損害賠償補償法三条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである。」

      「被上告人B1は、昭和四四年三月ころ、本件自動車の所有者である被上告人B2から、その所有者登録名義人となつていることを知らされ、これを了承するに至つたのであるが、

      被上告人B2は、被上告人B1の子であり、当時満二〇才で、同被上告人方に同居し農業に従事しており、右自動車は同被上告人居宅の庭に保管されていたというのであり、

      右事実関係のもとにおいては、同被上告人は本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあつたというべきであつて、右自動車の運行供用者にあたると解するのを相当とする。」

  • 会社の取締役が私用のため会社所有の自動車を使用し同乗の従業員に一時運転させている間に右従業員の惹起した事故により受傷した場合に会社に対し自動車損害賠償保障法三条にいう他人であることを主張して損害賠償を請求することができないとされた事例

S50.11.04  最高(三小)判 事件番号 昭49(オ)1035

  • 判決
    • 原審確定の上記の事実関係に徴すると、Dは被上告会社の業務終了後の深夜に本件自動車を業務とは無関係の私用のためみずからが運転者となりこれにEを同乗させて数時間にわたつて運転したのであり、

      本件事故当時の運転者はEであるが、この点も、Dが被上告会社の従業員であるEに運転を命じたという関係ではなく、Dみずからが運転中に接触事故を起こしたために、たまたま運転を交代したというにすぎない、というのであつて、

      この事実よりすれば、Dは、本件事故当時、本件自動車の運行をみずから支配し、これを私用に供しつつ利益をも享受していたものといわざるをえない。

      もつとも、原審認定の被上告会社による本件自動車の管理の態様や、Dの被上告会社における地位・身分等をしんしやくすると、Dによる本件自動車の運行は、必ずしも、その所有者たる被上告会社による運行支配を全面的に排除してされたと解し難いことは、原判決の説示するとおりであるが、

      そうであるからといつて、Dの運行供用者たる地位が否定される理由はなく、かえつて、被上告会社による運行支配が間接的、潜在的、抽象的であるのに対し、Dによるそれは、はるかに直接的、顕在的、具体的であるとさえ解されるのである。

      それゆえ、本件事故の被害者であるDは、他面、本件事故当時において本件自動車を自己のために運行の用に供していた者であり、被害者が加害自動車の運行供用者又は運転者以外の者であるが故に「他人」にあたるとされた当裁判所の前記判例の場合とは事案を異にするうえ、

      原判示のとおり被上告会社もまたその運行供用者であるというべきものとしても、その具体的運行に対する支配の程度態様において被害者たるDのそれが直接的、顕在的、具体的である本件においては、Dは被上告会社に対し自賠法三条の「他人」であることを主張することは許されないというべきである。

  • 損害保険会社が保険金の支払に関する示談契約を締結する場合と保険契約上の免責条項該当事由の調査義務

S50.11.14 最高(二小)判 事件番号 昭和50(オ)290

  • 判決
    • 自動車保険業務について専門的知識と経験を有する損
      害保険会社が,自動車事故について,被保険者のほか被害者を交えた三者間で,被保険者が損害賠償責任を承認した額につき保険金を支払うことを内容とする示談契約を締結する場合には,

      該保険会社は,あらかじめ,通常の査定事務処理の一環として,保険契約上の免責条項に該当する事由の有無を充分究明する必要があり,

      そのためには,所轄警察署に照会するだけでなく,事故の関係者からの事情聴取等の方法により事故の状況及び原因について慎重な調査を尽くすべき義務を負うものというべく 

  • 不法行為により死亡した国家公務員の得べかりし利益の喪失による損害賠償債権を相続した右公務員の死亡により遺族に支給される退職手当,遺族年金,遺族補償金の受給権者でない場合と相続した損害賠償債権額から右各給付相当額を控除することの可否

S50.10.24 最高(二小)判 事件番号 昭47(オ)645

  • 判決
    • 「国家公務員が死亡した場合,その遺族のうち一定の資格がある者に対して,国家公務員等退職手当法による退職手当及び国家公務員共済組合法による遺族年金(以下単に「遺族年金」と略称する。)が支給され,

      更に,右死亡が公務上の災害にあたるときは,国家公務員災害補償法による遺族補償金(以下単に「遺族補償金」と略称する。)が支給されるのである。

      そして,遺族に支給される右各給付は,国家公務員の収入によつて生計を維持していた遺族に対して,右公務員の死亡のためその収入によつて受けることのできた利益を喪失したことに対する損失補償及び生活保障を与えることを目的とし,

      かつ,その機能を営むものであつて,遺族にとつて右各給付によつて受ける利益は死亡した者の得べかりし収入によつて受けることのできた利益と実質的に同一同質のものといえるから,

      死亡した者からその得べかりし収入の喪失についての損害賠償債権を相続した遺族が右各給付の支給を受ける権利を取得したときは,

      同人の加害者に対する損害賠償債権額の算定にあたつては,相続した前記損害賠償債権額から右各給付相当額を控除しなければならないと解するのが相当である(最高裁昭和三八年(オ)第九八七号,同四一年四月七日第一小法廷判決民集二〇巻四号四九九頁参照。)

      「二 ところで,退職手当,遺族年金及び遺族補償金の各受給権者は,法律上,受給資格がある遺族のうちの所定の順位にある者と定められており,

      死亡した国家公務員の妻と子がその遺族である場合には,右各給付についての受給権者は死亡した者の収入により生計を維持していた妻のみと定められている(国家公務員等退職手当法一一条二項,一項一号,国家公務員共済組合法四三条一項,二条一項三号,国家公務員災害補償法昭和四一年法律第六七号改正前の一六条二項,一項二号)から,

      遺族の加害者に対する前記損害賠償債権額の算定をするにあたつて,右給付相当額は,妻の損害賠償債権からだけ控除すべきであり,子の損害賠償債権額から控除することはできないものといわなければならない。

  • 地方公務員等共済組合法に基づく退職年金の性格

S50.10.21 最高(三小)判 事件番号 昭48(オ)813

  • 判決
    • 地方公務員等共済組合法に基づく退職年金は,前記普通恩給とその趣旨・目的を同じくするものと解されるから,

      右退職年金が当該公務員本人及びその収入に依存する家族に対する生活保障のみならず損失補償の性格を有するとした原審の認定判断は,正当として是認することができる。

  • 交通事故により負傷した被害者の自殺と事故との相当因果関係が否定された事例

S50.10.03 最高(二小)判 事件番号 昭50(オ)389

  • 判決
    • 本件事故と被害者の自殺との間に相当因果関係がない旨の原審判断は、右事実関係のもとにおいて正当として首肯することができる

  • 下請負人の被用者の起こした事故につき元請負人に自動車損害賠償保障法三条による運行供用者責任が認められた事例

S50.09.11  最高(一小)判 事件番号 昭49(オ)602

  • 判決
    •  右事実関係のもとにおいては、本件事故当時の加害車の運行は、上告人A2の支配のもとに、同上告人のためになされたということができ、同上告人は自動車損害賠償保障法三条の運行供用者責任を負う

  • 国道上に駐車中の故障した大型貨物自動車を約八七時間放置していたことが道路管理の瑕疵にあたるとされた事例

S50.07.25 最高(三小)判 事件番号 昭和47(オ)704

  • 判決
    • おもうに,道路管理者は,道路を常時良好な状態に保つように維持し,修繕し,もつて一般交通に支障を及ぼさないように努める義務を負うところ(道路法四二条),

      前記事実関係に照らすと,同国道の本件事故現場付近は,幅員七・五メートルの道路中央線付近に故障した大型貨物自動車が八七時間にわたつて放置され,道路の安全性を著しく欠如する状態であつたにもかかわらず,

      当時その管理事務を担当するI土木出張所は,道路を常時巡視して応急の事態に対処しうる看視体制をとつていなかつたために,本件事故が発生するまで右故障車が道路上に長時間放置されていることすら知らず,

      まして故障車のあることを知らせるためバリケードを設けるとか,道路の片側部分を一時通行止めにするなど,道路の安全性を保持するために必要とされる措置を全く講じていなかつたことは明らかであるから,

      このような状況のもとにおいては,本件事故発生当時,同出張所の道路管理に瑕疵があつたというのほかなく,

      してみると,本件道路の管理費用を負担すべき上告人は,国家賠償法二条及び三条の規定に基づき,本件事故によつて被上告人らの被つた損害を賠償する責に任ずべきであり,

      上告人は,道路交通法上,警察官が道路における危険を防止し,その他交通の安全と円滑を図り,道路の交通に起因する障害の防止に資するために,

      違法駐車に対して駐車の方法の変更・場所の移動などの規制を行うべきものとされていること(道路交通法一条,五一条)を理由に,前記損害賠償責任を免れることはできないものと解するのが,相当である。

      したがつて,これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。
       

  • 自動車損害賠償保障法施行規則二七条一項所定の請求書と損害の査定

S50.07.14 最高(二小)判 事件番号 昭49(オ)1196

  • 判決
    • 政府が,自動車損害賠償保障法七二条に基づき損害をてん補するにあたつては,被害者等の提出した同法施行規則二七条一項所定の請求書中に請求金額及びその算出基礎の記載がなくても,それに拘束されることなく,損害査定のうえそのてん補をすることを妨げない 

  • 県道上に工事標識板赤色灯標柱などが倒れ赤色灯が消えたままであつても道路の管理に瑕疵がないとされた事例

S50.06.26 最高(一小)判 事件番号 昭46(オ)887

  • 判決
    •  右の事実関係に照らすと,本件事故発生当時,被上告人において設置した工事標識板,バリケード及び赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから,道路の安全性に欠如があつたといわざるをえないが,

      それは夜間,しかも事故発生の直前に先行した他車によつて惹起されたものであり,時間的に被上告人において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であつたというべく,このような状況のもとにおいては,被上告人の道路管理に瑕疵がなかつたと認めるのが相当である 

  • 自動車賃貸業者に自動車損害賠償保障法三条による運行供用者責任が認められた事例

S50.05.29  最高(一小)判 事件番号 昭46(オ)447

  • 判決
    • 原審が適法に確定したところによれば、上告人はレンタカーを賃貸するに当り、借主につき免許証の有無を確認し、使用時間、行先を指定させて走行粁、使用時間に応じて預り金の名目で賃料の前払をさせ、

      借主の使用中使用時間、行先を変更する場合には、上告人の指示を受けるため返還予定時刻の三時間前に上告人にその旨連絡させ、これを怠つた場合には倍額の追加賃料を徴収するものとし、車両の整備は常に上告人の手で責任をもつて行われ、賃貸中の故障の修理も原則として上告人の負担であつたというのであり、

      右事実関係のもとにおいては、上告人は本件事故当時本件自動車に対する運行支配及び運行利益を有していたものということができ自動車損害賠償保障法三条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者としての責任を免れない旨の原判決の判断は、正当として是認することができる。

  • 一 交通事故が被害者の余病の発生に五〇パーセント寄与しているとしてその限度において賠償責任が認められた事例
  • 二 交通事故後の転職による収入の増加と逸失利益

S50.03.31 東京高判 事件番号 昭49(ネ)1596

  • 判決
    • 要旨
      一 交通事故による骨折等の外傷のため長期にわたり臥床したことが誘因となつて、被害者(三七才)が少年期(九才)に患つた骨髄炎が再発したと認められる場合、受傷の部位、程度、骨髄炎再発の状況、経過を総合考慮するときは、右骨髄炎再発に対する事故の寄与の程度を五〇パーセントと認め、賠償責任を負担させるのが相当である。

      二、 交通事故による被害者が後遺症のため労働能力の低下をきたしている場合には、事故後の転職により収入の増加をきたしているとしても、逸失利益がないとはいえない。





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