請求権等 誰が・誰に

運行供用者とは

自賠法3条は交通事故の賠償責任者として、あらたに自動車を運行の用に供する者という概念を設定し、この運行供用者は、その自動車の運行により生じた他人の人身被害について、いわゆる「免責の3条件」を立証しない限り賠償責任を負うものとして、被害者の保護を図っています。

運行供用者とは、その自動車につき運行支配、運行利益を有する者をいうとされています。

自動車の所有者は、盗難にあったりしてその運行支配を事実上完全に失った場合以外には、ほとんど常に運行供用者にあたる一方、所有者でなくても、これを借り受けて使用していた者など、実質的にその運行を支配し、利益を得ていた者もこれに該当することになります。


運行供用者の成立要件

1.運行による事故であること。

自賠法3条の責任は、自動車の運行によって生じた損害に限られます。
この運行とは、「自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」とされています。

2.他人の生命、身体を害したこと。

自賠法3条にいう「他人」とは、通常、運行供用者および運転者(運転補助者を含む)以外の者をいいます。その車の所有者、使用者、運転者、場バスの車掌等は他人に当たらない。

3.免責の3条件が立証できないこと

通常の不法行為責任の場合には、被害者が事故発生について、加害者に故意または過失があったことを証明しなければ賠償を請求できないのですが、自賠法3条は交通事故の人身被害に限ってこの建前を逆にし、加害者側がその無過失等上記3条件を立証しない限り賠償責任を免れないとして、被害者の保護を図っています。


運行供用者と保有者

保有者とは運行供用者のうちで、自動車を使用する権利を有する者をいいます。ほとんどの場合運行供用者=保有者となりますが、泥棒運転の場合は、泥棒は運行供用者ですが保有者ではない。運行供用者と保有者の区別の意味は、保有者は自賠責保険の被保険者である点にあります。

泥棒運転で人身事故を起こした場合、泥棒は、運行供用者として自賠法3条の責任を負いますが、自賠責への請求権はないことになります。被害者は政府保障事業への請求ができます。


運行供用者の具体例

1.所有者
自分の車を運転していた所有者が人身事故を起こした場合、所有者は運行供用者として責任をいます。同時に民法709条の不法行為責任も負います。

会社の車を従業員が運転中人身事故を起こした場合、会社は運行供用者として責任を負います。同時に会社は民法715条の使用者責任も負います。

運転した従業員は、民法709条の不法行為責任を負います。
従業員は、車を「自己のために」運転していたわけではないので運行供用者ではない。

2.第三者の無断運転の場合、無断で乗り出した者と保有者との人的関係、無断持ち出しの態様から判断されます。従業員が会社の自動車を、また同居の子供が親の自動車を無断で運転した例では、多くの場合会社や親は依然として運行供与者であるとされています。無断運転者も運行供用者責任を負います。

3.泥棒運転者本人は運行供用者責任を負いますが、泥棒された者は責任を負うか。管理上の過失の認められるときは、民法上の不法行為責任の認められる場合があります。

4.修理業者に修理のために自動車を預けていた期間中、修理業者ないしその従業員によって人身事故が起こった場合、修理業者に運行支配が移っているため、依頼主運行供用者責任は負わないとされています。修理業者が運行供用者責任を負うことになります。

5.自動車をディーラーから割賦販売で購入する場合、ディーラーは債権保全のため、所有権をディーラーに残しておきます。
この場合、買主が人身事故を起こした場合について、ディーラーは、特別の事情のない限り運行支配も運行利益もなく、運行供用者責任はないとされています。

6.マイカーを会社との合意あるいは会社命令によって業務に使用している場合は、業務使用中の事故については、会社は運行支配、運行利益を有しているので、運行使用者責任があります。車用で出張中の場合も同様に考えらえます。

7.会社の業務に使用しているマイカーで通勤途上の事故については、会社に運行供用者責任が認められます。
もっぱら通勤のみに使用している車の通勤途上の事故については会社には運行供用者責任はないとされています。






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