ページ [10] 11 12 13 14 ...

  • 身体的機能の一部喪失と労働能力喪失を理由とする財産上の損害の有無

S56.12.22 最高(二小)判 事件番号 昭54(オ)354

  • 判決
    • かりに交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとしても,

      その後遺症の程度が比較的軽微であつて,しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては,特段の事情のない限り,労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないというべきである。

  • 一 女児の逸失利益をパートタイム労働者を除く女子全労働者の平均給与額によつて算定することの当否
  • 二 女児の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり平均給与額の五割相当の生活費を控除することの当否
  • 三 将来の得べかりし利益を現在価額に換算するための中間利息控除の方法とライプニツツ式計算法

S56.10.08 最高(一小)判 事件番号 昭56(オ)498

  • 判決
    • 「交通事故により死亡した幼児(当時満八歳の女児)の将来の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり,賃金センサスによるパートタイム労働者を除く女子全労働者・産業計・学歴計の表による各年齢階級の平均給与額を基準として収入額を算定したとしても,

      交通事故により死亡した幼児の将来の得べかりし収入額の算定として不合理なものとはいえないこと,及び右得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するにあたり右平均給与額の五割相当の生活費を控除したとしても,不合理なものといえない

      「ライプニツツ式計算法が交通事故の被害者の将来の得べかりし利益を現在価額に換算するための中間利息控除の方法として不合理なものとはいえない

  • 自働債権又は受働債権として数個の元本債権があるにもかかわらず当事者が相殺の順序の指定をしなかつた場合における相殺充当の方法

S56.07.02 最高(一小)判 事件番号 昭和55(オ)396

  • 判決
    • このように自働債権又は受働債権として数個の元本債権があり,相殺の意思表示をした者もその相手方も右数個の元本債権につき相殺の順序の指定をしなかつた場合における元本債権相互間の相殺の順序については,

      民法五一二条,四八九条の規定の趣旨に則り,元本債権が相殺に供しうる状態となるにいたつた時期の順に従うべく,

      その時期を同じくする複数の元本債権相互間及び元本債権と利息・費用債権との間で充当の問題を生じたときは右四八九条,四九一条の規定を準用して充当を行うのが相当である 

  • いわゆる政令指定都市の区長が弁護士法二三条の二に基づく照会に応じて前科及び犯罪経歴を報告したことが過失による公権力の違法な行使にあたるとされた事例

S56.04.14 最高(三小)判 事件番号 昭52(オ)323

  • 判決
    • 本件において、原審の適法に確定したところによれば、京都弁護士会が訴外D弁護士の申出により京都市伏見区役所に照会し、

      同市中京区長に回付された被上告人の前科等の照会文書には、照会を必要とする事由としては、右照会文書に添付されていたD弁護士の照会申出書に「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」とあつたにすぎないというのであり、

      このような場合に、市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使にあたると解するのが相当である。

      原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、中京区長の本件報告を過失による公権力の違法な行使にあたるとした原審の判断は、結論において正当として是認することができる
       

  • 自動車損害賠償保障法三条の規定による損害賠償請求権を執行債権とする転付命令と右損害賠償義務の履行によつて発生すべき同法一五条所定の自動車損害賠償責任保険金請求権の被転付適格

S56.03.24 最高(三小)判 事件番号 昭53(オ)880

  • 判決
    • しかしながら,自賠責保険契約に基づく被保険者の保険金請求権は,被保険者の被害者に対する賠償金の支払を停止条件とする債権であるが,

      自賠法三条所定の損害賠償請求権を執行債権として右損害賠償義務の履行によつて発生すべき被保険者の自賠責保険金請求権につき転付命令が申請された場合には,

      転付命令が有効に発せられて執行債権の弁済の効果が生ずるというまさにそのことによつて右停止条件が成就するのであるから,右保険金請求権を券面額ある債権として取り扱い,その被転付適格を肯定すべきものと解するのを相当とする。 

  • 被害自動車の運転者とこれに同乗中の被害者が同じ職場に勤務する同僚である場合と過失相殺において被害者側と認められるための身分上、生活関係上の一体性の有無

S56.02.17 最高(三小)判 事件番号 昭55(オ)768

  • 判決
    • 上告人と訴外Dとは、訴外Eが経営する寿司店に勤務する同僚であつて、上告人が訴外E所有の被害車の助手席に乗り、訴外Dがこれを運転中に本件事故を惹起したというにとどまるから、

      上告人と訴外Dとは、他に特段の事情がない限り、身分上、生活関係上一体をなす関係にあると認めることは相当でないものといわなければならない

  • 一 安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務の履行遅滞となる時期
  • 二 安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族と固有の慰藉料請求権の有無

S55.12.18 最高(一小)判 事件番号 昭51(オ)1089

  • 判決
    • 「原審が認容した請求は不法行為に基づく損害賠償請求ではなくこれと択一的に提起された被上告人らが亡Dに対して負担すべき同人と被上告人B株式会社との間の雇傭契約上の安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求であることが原判決の判文に照らして明らかであるから,所論中前者の請求であることを前提として原判決の判断を非難する部分は理由がない。

      ところで,債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり,民法四一二条三項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきであるから,

      債務不履行に基づく損害賠償請求についても本件事故発生の翌日である昭和四三年一月二三日以降の遅延損害金の支払を求めている上告人らの請求中右遅滞の生じた日以前の分については理由がないというほかはないが,その後の分については,損害賠償請求の一部を認容する以上,その認容の限度で遅延損害金請求をも認容すべきは当然である

      「上告人らは子である亡Dを失つたことによる精神的苦痛に対する慰藉料としてそれぞれ一二五万円の支払を求め,原審は上告人ら各自につき五〇万円の限度でこれを認容しているが,

      亡Dと被上告人らとの間の雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者でない上告人らが雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係上の債務不履行により固有の慰藉料請求権を取得するものとは解しがたいから,上告人らは慰藉料請求権を取得しなかつたものというべく,したがつて,右五〇万円について前記期間の遅延損害金請求を棄却した原判決は結局正当である

  • 港湾施設の建設工事中である埋立地内の道路を夜間走行していた自動車が岸壁から海中に転落して運転者が死亡した場合において右埋立地の管理に瑕疵があるとされた事例

S55.09.11 最高(一小)判 事件番号 昭54(オ)227

  • 判決
    • 三 しかしながら,原審が確定した前記一記載の事実関係のもとにおいては,本件事故当時,港湾施設の建設工事に関係のない一般車両が都市計画幹線道路から舗装ずみの取付道路を通つて本件埋立地内に立ち入ることがきわめて容易で,かつ,その可能性を否定することができない状況にあり(現にとくに夜間には一般車両が立ち入ることがあつた。),

      しかも夜間にこれらの車両が本件埋立地内の道路を進行した場合には,亡Dと同じように,物揚場の岸壁から海中に転落して死傷等の事故の発生する危険性が客観的に存在したことは否定することができないから(とくに車両がいわゆる甲道路を直進した場合には,その延長線上の海を挟んだ対岸に石油会社の照明設備があることから,気象状況のいかんによつては,運転者に対してあたかも右道路が対岸まで一直線に延びているかのような錯覚を与える危険のあつたことがうかがわれる。),

      本件埋立地の管理者としては,一般車両が本件埋立地内に立ち入つて事故を起こす危険に備えて,夜間でも識別することができるように,取付道路の入口付近に一般車両の立入りを禁止するための立札ないし標識灯を設置するか,

      又はいわゆる甲道路と交差する物揚場の岸壁付近に道路前方が海であることを示す危険標識を設置するなどして,進入車両の転落事故の発生を未然に防止するための安全施設を設置することが,最小限必要であつたものと解するのが相当である。

      けだし,国家賠償法二条一項にいう公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠くことをいうのであるが,当該営造物の利用に付随して死傷等の事故の発生する危険性が客観的に存在し,

      かつ,それが通常の予測の範囲を超えるものでない限り,管理者としては,右事故の発生を未然に防止するための安全施設を設置する必要があるものというべきであり,

      たとい本件において,本件埋立地内のいわゆる甲道路が一般車両の通行が予定された道路法二条所定の道路にはあたらないこと,また,本件事故当時,右甲道路を含む本件埋立地が港湾施設工事の途中であつて,

      その本来の用途目的と無関係な一般車両のための安全施設についてはその検討,設置の段階以前の状況にあつたこと等の原判決の指摘する事情があつたとしても,

      この点から直ちに,一般車両の本件埋立地への立入りを予測することが困難であるとか,あるいはこれを予測して危険防止のための措置を講ずることを要求することが不当であるとすることはできないからである。

      してみれば,他に特段の事情のない限り,本件埋立地の管理には瑕疵のあつた疑いがあるものといわざるをえない 

  • 生命保険契約に附加された特約による給付金と商法六六二条の適用の有無

S55.05.01 最高(一小)判 事件番号 昭54(オ)344

  • 判決
    • 生命保険契約に付加された特約に基づいて被保険者である受傷者に支払われる傷害給付金又は入院給付金は、既に払い込んだ保険料の対価としての性質を有し、たまたまその負傷について第三者が受傷者に対し不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償義務を負う場合においても、

      右損害賠償額の算定に際し、いわゆる損益相殺として控除されるべき利益にはあたらないと解するのか相当であり(最高裁昭和四九年(オ)第五三一号同五〇年一月三一日第三小法廷判決・民集二九巻一号六八頁参照)、

      また、右各給付金については、商法六六二条所定の保険者の代位の制度の適用はないと解するのが相当であるから、その支払をした保険者は、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得するものではなく、

      したがつて、被保険者たる受傷者は保険者から支払を受けた限度で第三者に対する損害賠償請求権を失うものでもないというべきである。
       

  • 歩道と車道とが分離されずまた歩行者が通行している路肩部分が未舗装で降雨時にぬかるうえ夜間の照明が十分でない道路であつてもその設置又は管理に瑕疵がないとされた事例

S55.03.13 最高(一小)判 事件番号 昭53(オ)979

  • 判決
    • 右認定の事実関係のもとにおいて,本件道路の設置又は管理に瑕疵がなく,また,本件道路の状況と本件事故の発生との間には相当因果関係がないとした原審の各判断は,正当であつて,原判決に所論の違法はない 

  • 利息制限法所定の制限利率を超過する利息部分を目的とする準消費貸借契約の効力

S55.01.04 最高(一小)判 事件番号 昭54(オ)196

  • 判決
    • 原審が適法に確定したところによると、右の準消費貸借契約の目的となつた旧債務は、

      上告人側が被上告人B1から借り受けた元本八〇〇万円に対する月五分の割合による昭和四四年六月分及び七月分の利息合計八〇万円を含む総計三三八万九一〇〇円にのぼる上告人側の被上告人B1に対する債務のうちの三〇〇万円であるというのであるが、

      右に挙げた元本八〇〇万円の消費貸借上の債務に対する利息制限法所定の利息の最高限度額は一か月につき一〇万円であることが計数上明らかであるから、

      右八〇万円のうち昭和四四年六月分及び七月分の利息合計二〇万円を超える六〇万円については利息制限法一条に違反する約定によるものとして利息債権は存在しないといわなければならず、

      したがつて、準消費貸借上の債権も右の限度で存在しないこととなるから、右準消費貸借上の債権を自働債権とする相殺の抗弁を認容した原判決は不存在の右債権額の限度で違法であり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由がある 

  • 甲・乙両自動車の運行により生じた交通故につき甲自動車の保有者との関係では自動車損害賠償責任保険から損害の填補を受けることができないが乙自動車の保有者の加入している右保険から損害の填補を受けることができる場合と政府の行う自動車損害賠償

S54.12.04 最高(三小)判 事件番号 昭53(オ)1361

  • 判決
    • 甲・乙両自動車の運行により生じた交通事故につき、被害者が甲自動車の保有者との関係では自動車損害賠償責任保険から損害の填補を受けることができない場合であつても、乙自動車の保有者の加入している右保険から損害の填補を受けることができるときは、被害者は、政府の行う自動車損害賠償保障事業に対し甲自動車に関する保障金を請求することができない。

  •  同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間における相殺の許否

S54.09.07 最高(二小)判 事件番号 昭53(オ)1198

  • 判決
    • 本件のように上告人、被上告人双方の各被用者の過失に基因する同一事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間において民法五〇九条の規定により相殺が許されないことは、当裁判所の判例(昭和四七年(オ)第三六号同四九年六月二八日第三小法廷判決・民集二八巻五号六六六頁)とするところであり、 

  • 車両が道路外の施設に入るために右折する場合と直進対向車に対する注意義務

S54.07.24 最高(三小)判 事件番号 昭54(オ)70

  • 判決
    • 要旨
      国道を道路外の施設に入るために右折しようとするバスの運転者は、右折発進時における直進対向車との距離が百数十メートルあつてその速度を的確に認識することが困難であり、

      かつ、バスの車長が長いため右折完了までに六・五ないし八秒を要するなど原判示の事実関係のもとにおいては、

      直進対向車が法定の最高速度を時速一〇ないし一五キロメートル程度超過して走行している可能性のあることを予測にいれたうえで右折の際の安全を確認すべき注意義務がある。

  • 幼児の逸失利益をいわゆる初任給固定方式によつて算定することの当否

S54.06.26 最高(三小)判 事件番号 昭54(オ)214

  • 判決
    • 亡Dの将来得べかりし利益の喪失による損害賠償を算定するにあたり,原審が賃金センサス昭和五〇年第一巻第一表,産業計,企業規模計,学歴計一八歳ないし一九歳の女子労働者の平均給与額を基準として収入額を算定したとしても,

      交通事故により死亡した幼児の将来得べかりし収入額の算定として不合理なものとはいえず,原判決に所論の違法はない。





a:2014 t:2 y:0